羊の水海

岬ちゃん
ブック

2020年7月16日

NHKにようこそ!の岬ちゃんは僕らの救い

僕は少し病んでいる系のヒロインにどうしてか惹かれてしまう。
急にトリッキーな言動を行ったかと思えば、その次には塞ぎ込んでしまう。触れたらすぐ壊れてしまいそうで儚い、そういうヒロインが好きだ。
今回は僕が読んできた漫画や小説の中で一番心に残っているヒロインについて語ろうと思う。

それは、滝本竜彦著「NHKにようこそ!」のヒロイン「中原岬」である。

色んな物語に触れてきたけれど、僕はどうしてもこの子のことをずっと考えてしまう。

NHKにようこそのあらすじはこちら。

大学を中退して4年目の佐藤達広は、ひきこもりとなり脱法ドラッグを常用するなど自堕落な生活を送っていた。佐藤は、自分が大学を辞め、無職でひきこもりであることなど全てが、謎の巨大組織の陰謀であると妄想する。その組織の名はNHK(日本ひきこもり協会)。

そんな折、佐藤は宗教の勧誘に現れた中年婦人の連れの美少女と出会い、その後も漫画喫茶の面接の際に偶然再会するが佐藤は直ぐに逃げ出してしまう。 面接の履歴書から住所を突き止めた謎の美少女は佐藤の家に履歴書と共に公園まで来るように書いた手紙を添える。

中原岬と名乗る美少女は佐藤をひきこもりから脱却させるべく、「プロジェクト」の遂行を宣言。その「プロジェクト」の目的が不明のまま、岬による佐藤のカウンセリングが始まり、さらに程なくして偶然同じアパートに住んでいた後輩の山崎薫と共にゲーム作りに励む事になる。

NHKにようこそ! - wikipedia

岬ちゃんというのは、世界のダメ人間が心のなかで強く求めている救いが具現化した存在なのだと思う。
ダメ人間は何もできないしどこにも行けないし何かをする気すらも起きないけれど、岬ちゃんは外の世界に連れ出してくれる。
岬ちゃん自身も完璧な存在ではなく歪であるので、何も持たない僕らに守ってあげたくなるという「生きる意味」さえくれる。

ヒロインという枠を超えた救いの姿がそこにある。

この作品には小説、漫画、アニメと3つのメディアがあるが、それぞれで岬ちゃんの性格が他と異なるような感じがする。

小説版の岬ちゃんはどこか憂いを帯びていて儚く繊細なイメージ。
漫画版の岬ちゃんはトリッキーで行動力もあるが内心弱く、世界には上手く馴染めていないイメージ。

当然、小説と漫画で基本的な性格は同じではあるのだが、儚いよりなのが小説で、トリッキーよりなのが漫画なのだと思う。
アニメは小説と漫画の展開やイベントを組み合わせた構成になっているので、一貫する性格がぶれてしまっている。

けれどもどの岬ちゃんも魅力的である。僕は小説の岬ちゃんが一番好きだ。小説版の岬ちゃんのどこかか細く繊細で壊れやすそうな雰囲気、僕はそういうヒロインが好きなのだ。

余談だけれど、僕はいつの間にか主人公の年齢を軽く超えてしまっていることに驚いている。
僕がNHKにようこそ!を最初に読んだときは、中学生のときで、主人公には「ひきこもりの大人」というカテゴライズをしていた。
僕の精神はそれから何一つ成長することもなく令和2年となってしまったので、いまだに僕の中ではこの主人公のカテゴリーは「ひきこもりの大人」なのだ。しかしすぐにもう僕は「ひきこもりの大人」よりも大人になってしまっているのだと気づく。

この作品を初めて読んだときから僕のもとに岬ちゃんはいつ来るのだろう、とずっと待ち望んでいたけれども、どうやらもう来ることはなさそうだ。

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